【遊戯王】融合軸転生炎獣デッキ解説Part.2~キマイラ1キル編~【大会優勝】
というわけで、お久しぶりです。二郎です。がらにもなく今期の遊戯王をテーマにした4コマを描いてみました。
今回は↑に引き続いて融合を軸とした転生炎獣デッキの解説をしていきたいと思います。
前回は、割と無難でポピュラーなサラマンの解説に留めたのですが、今回は試行錯誤とトライアンドエラーの末に辿り着いたこのデッキの”肝”というべき部分について解説していきます。
前回記事から結構経ちますが、その間にやや構築を変えて秋葉原で優勝したりなどしていました。
本日の秋葉原イエサブ遊戯王店舗大会で使用した【融合転生炎獣】です。
— 二郎重忠 (@Yamadazirou) 2020年1月28日
恐竜サンドラ ○○
星遺物JK ×○○(ET)
P軸妖仙獣 ×○○
で8人トナメ全勝優勝しました。やったぜ pic.twitter.com/ThppbwY0ll
(優勝とは言ってますが、決勝相手の方と大会前の調整で手合わせしており、初手からデッキ読みをして互いにメタを張り合うという場外的な部分もあったので純粋な”勝ち”と呼べるかどうかは正直疑問です。)
その後、WCS店舗予選にも参加しながら構築を練り上げていましたが、先の4コマのように2月中旬から3月末まで公式の遊戯王関連大会が中止になってしまったので、権利は取れずじまいのまま終わってしまいました。残念。
とはいえ回し方のコツがつかめると、リリクラドラグーンとオルフェ以外なら体感7割程度の勝率を取れるので楽しいデッキでした。
そして回し方解説に加えて、「融合軸であることのメリット・デメリット」についても考察していこうと思います。
融合に必要なカード紹介
「本日の主役」《転生炎獣ヴァイオレットキマイラ》
炎属性 レベル8
サイバース族
融合 / 効果
攻撃力2800 守備力2000
「サラマングレイト」モンスター+リンクモンスター
①:このカードが融合召喚に成功した場合に発動できる。このカードの攻撃力はターン終了時まで、素材としたモンスターの元々の攻撃力を合計した数値の半分だけアップする。②:このカードが元々の攻撃力と異なる攻撃力を持つモンスターと戦闘を行うダメージ計算時に1度、発動できる。このカードの攻撃力はそのダメージ計算時のみ倍になる。
③:「転生炎獣ヴァイオレットキマイラ」を素材として融合召喚したこのカードと戦闘を行うモンスターの攻撃力はダメージ計算時のみ0になる
(遊戯王 オフィシャルカードゲーム デュエルモンスターズ カードデータベースより引用)
最強。
環境では一時期サラマン対策として、超融合用でエクストラに刺されていたことがありましたが、きちんとテキストを読んで採用された方は意外と少ないのではないのでしょうか?
融合素材として「サラマングレイト」モンスター1体とリンクモンスター1体を指定しており、レベル4以下のサイバース1体で出せる《転生炎獣ベイルリンクス》の存在から、サラマンデッキであれば簡単に揃えることが可能です。
主な効果としては、
①:融合召喚に成功した場合、融合素材の攻撃力合計の半分、打点が上昇する誘発効果。
②:元々の攻撃力が変わっているモンスターと戦闘を行う時、攻撃力が倍になる誘発効果。
③:同名を素材としている時、戦闘するモンスターの攻撃力を0にする永続効果。
を持っています。
全ての効果が「相手を一撃で1キルする」ことに特化していることが分かるかと思います。
同名を素材にした場合、①効果で少なくとも打点が1400上昇して4200になり、③効果で相手のモンスターの打点を0にするため、②効果で自身の打点を倍にし
4200×2=8400ものダメージを与えられます。
また、同名を素材にせずとも、自身の効果で打点を3000以上に上げられるため、相手場の高打点モンスターを処理する役目も背負っています。
「とはいえ、融合モンスターを素材に融合なんて効率が悪すぎる」とお思いの方もいるでしょう。僕もそう思います。
注目すべきは、②の効果のトリガーは「戦闘を行うモンスターの打点が変わっている場合」であり、同名を素材にしていなくてもその条件さえ満たせば1キル火力を作れる、という点です。
このデッキでは、(同名を素材にした場合も含めて)3通りの方法で1キルすることを狙います。
名前が長いので以下、キマイラと略記します。
「書いてあることが字レアじゃない」《フュージョン・オブ・ファイア》
このカード名はルール上「サラマングレイト」カードとしても扱う。このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
①:自分の手札及び自分・相手フィールドから、「サラマングレイト」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。
一見、《ジェムナイト・フュージョン》や《錬装融合》のような、カテゴリサポートを受けられる専用の融合魔法です。
しかし、テキストをよくよく読んでみると、
「自分の手札及び自分・相手フィールドから」
とあります。
え?やってること超融合?
カテゴリサポートを受けられる超融合!?!?!?!?
こんなカードが、強くないわけがないんだよなあ。
一応、超融合と比べると、
強い点
・ルール上、「サラマングレイト」カテゴリに属する。
・手札コスト不要。
・場だけでなく手札からも融合素材に出来る。
・無制限カードなので3枚積める。
・知名度が低いので対策されにくい。
弱い点
・通常魔法なので、超融合のようにバトルフェイズや相手ターンに発動できない。
・チェーンされる。
・名称ターン1の発動制限がある。
・融合先が現状《転生炎獣ヴァイオレットキマイラ》のみ。
と、超融合に比べて防御札にはなりにくいですが、融合札としては勝るとも劣らない性能といえます。
相手の場も巻き込む場合、サラマンミラーでない限り、基本的に相手のリンクモンスターを素材にすることになります。狙い目は、《召命の神弓-アポロウーサ》等の妨害効果を持つリンクモンスターや、《リンクリボー》のような1キルに邪魔となるモンスターでしょう。
しかし、キマイラでモンスターを殴らないと打点が倍にならない都合上、相手場がリンクモンスター1体だけの場合は素材にせず、サンドバッグとした方が良い場合もあるので使いこなすには的確な判断力を要求されます。
また、「フュージョン」通常魔法である点から、《捕食植物ヴェルテ・アナコンダ》でデッキから直接発動することも出来ます。アナコンダ自体がリンクモンスターであるため、キマイラを出す消費を極めて少なくできます。
「アナコンダのプロキシに使えるとか言った奴出てこい」《プロキシー・F・マジシャン》
炎属性 リンク2
サイバース族
リンク / 効果
攻撃力1400 守備力-
効果モンスター2体
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。①:自分メインフェイズに発動できる。自分フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。
②:このカードのリンク先に融合モンスターが融合召喚された場合に発動できる。手札から攻撃力1000以下のモンスター1体を特殊召喚する。
— 二郎重忠 (@Yamadazirou) November 15, 2019
僕です。(自供)
10期最後の通常弾、エタニティ・コードで登場した、汎用のリンク2モンスターです。効果は自分フィールドのモンスターを素材に融合を行う起動効果を持っています。
手札からの融合はできませんが、このカード自身がキマイラの融合素材になれることにより、超融合やフュージョンオブファイアなどの融合札が無くとも、サラマンを含む効果モンスターを3体並べるだけで、1キルフィニッシュ性能を持つキマイラを出せてしまいます。ヴァレルソードなんていらなかったんや。
また、炎属性であることにより、リンク2以上のサラマンリンクモンスターの素材になれたり、《転生炎獣ミラージュスタリオ》のリクルート効果発動後の「炎属性モンスターの効果しか発動できない」制約に引っかからないという点でもサラマンとは相性が良いです。同弾で登場した《転生炎獣ゼブロイドX》よりも明らかにサラマンです。
リンク先に融合した場合、手札から展開できる効果も持っていますが、サラマンはやや打点が高いので、出せるのは余った手札誘発くらいでしょうか。とはいえ、プロキシーFを素材にキマイラを出すのが1番手っ取り早いため、あまり使う機会はありません。
1キル成立を支えるサポート達
融合補助編
「出した時、高確率で効果確認される奴No.1」《転生炎獣フェネック》
炎属性 レベル3
サイバース族
攻撃力1600 守備力200
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。①:このカードが手札・墓地に存在し、EXデッキから特殊召喚された自分フィールドのサイバース族モンスターが戦闘または相手の効果で破壊された場合に発動できる。このカードを特殊召喚する。この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。
②:このカードがリンク2以上のサイバース族リンクモンスターのリンク素材として墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから「サラマングレイト」通常魔法カード1枚を手札に加える。
ダーク・ネオストームで登場した星3のサラマンです。
①はエクストラから出たサイバースが破壊された場合に除外デメリット付きで手札・墓地から特殊召喚される効果。
②はリンク2以上のサイバースの素材となった場合にデッキから「サラマングレイト」魔法をサーチする効果。
①で出した場合、除外されてしまうので②の効果に繋げることは出来ず効果どうしの噛み合いは悪いです。
しかし、サラマンのランク3エクシーズモンスターであるミラージュスタリオからリクルート、2体を素材にサンライトウルフにすることで、相手場のモンスター1体をバウンスしつつ、フュージョン・オブ・ファイアをサーチすることが出来ます。
ミラージュスタリオの墓地効果と同時に発動するため、チェーン①フェネック、チェーン②ミラージュスタリオと組むことで、サーチ効果を《灰流うらら》等に妨害されずに済みます。逆に、融合札を必要とせず確実にバウンスを通したい場合は順番を入れ替えることでカウンターを防ぐことも出来ます。
手札にガゼル、フォウルが存在したり、墓地にスピニーが存在するなど、場にサラマンを複数並べる手段があれば、リンク召喚するモンスターをプロキシーFにすることで、融合札を2種類そろえることが可能になります。
コンボ性の高いカードであり、手札に来てしまうと真価を発揮しにくいですが、①の壁になる効果は、墓地が肥えた状態でターンが回ってきさえすれば一撃で逆転できるこのデッキの延命手段にもなり得ます。
また、星3のサラマンであることから、このカードとスピニーがあればミラージュスタリオになることもできます。
打点変更編
「伏せ2枚バウンスとかいう獅子どころか鬼」《転生炎獣ヒートライオ》
炎属性 リンク3
サイバース族
リンク / 効果
攻撃力2300 守備力-
炎属性の効果モンスター2体以上
①:このカードがリンク召喚に成功した場合、相手の魔法&罠ゾーンのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを持ち主のデッキに戻す。②:このカードが「転生炎獣ヒートライオ」を素材としてリンク召喚されている場合、1ターンに1度、フィールドの表側表示モンスター1体と、自分の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。対象のフィールドのモンスターの攻撃力は、ターン終了時まで対象の墓地のモンスターの攻撃力と同じになる。
リンク召喚成功時に相手の魔法罠を1枚デッキバウンス、同名を素材に転生している場合、モンスターの打点を自分の墓地の任意のモンスターの打点で上書きできるという効果を持ちます。
素材は炎属性2体以上と、サラマンにおいて満たすのは容易です。ガゼル1枚からの基本展開を行い、サンライトウルフと自己蘇生したジャガー等で作れるほか、相手の墓地に《灰流うらら》や《ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム》等汎用の炎属性モンスターがいれば《灼熱の火霊使いヒータ》から2体消費で出すことも可能です。うまぶりは大事。
また、このカードのテキストをよーく読んでみてください。10期のカードにしてはおかしい点があるとは思いませんか?
そう、魔法罠のバウンス効果に名称ターン1がついていないのです。
《転生炎獣の聖域》による1体での転生権が残っていれば、1ターンに2回リンク召喚し、相手場の伏せを2枚デッキバウンスすることも可能です。これにより、キマイラの融合召喚及び効果発動を通しやすくなります。バウンスであるため、《やぶ蛇》のような破壊をトリガーにする効果の発動をケアできます
オルターガイストや罠メタビとのサイド2戦目等で、相手が発動した《神の宣告》等を自分の《レッド・リブート》で無効にし再セット、さらに相手がデッキからセットした計2枚の罠を、上述の転生リンクで2枚ともバウンスする動きは、自分でやっていて「犯罪では・・・?」と思ってしまいます。
また、転生後の攻撃力上書き効果も非常に汎用性が高いです。
自分フィールドの低打点モンスターをヒートライオの2300で上書きして打点を水増しするのが一般的な使い方ですが、相手場のモンスターを自分の墓地の低打点モンスターで上書きすることで、キマイラによる1キルサンドバッグを用意できます。
墓地にベイルリンクスがあれば500まで下げることができ、またフィールド・墓地で対象に取るモンスターはサラマン以外でもいいため、《灰流うらら》《エフェクト・ヴェーラー》等の攻撃力0の手札誘発を使用していたなら、問答無用で打点を0に出来ます。
他にも自分で出した《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の打点を下げて自爆特攻することで、相手場のモンスターぶっぱ効果を起動させることも出来ます。(筆者はこのことに気付いていれば勝てていたオルターとの試合があったので書き残してます)
このカードの弱点としては、どちらの効果も対象を取るため対象耐性に弱い点。また①でのバウンス効果は「魔法・罠ゾーン」限定であるため、フィールド魔法はフォクシーなど別の手段で処理する必要があります。
「幾度となく人を轢き殺してきた無情1キルトカゲ」《クロック・リザード》
闇属性 リンク2
サイバース族
リンク / 効果
攻撃力1200 守備力-
サイバース族モンスター2体
①:このカードをリリースして発動できる。自分の墓地から融合モンスター1体を選んでEXデッキに戻す。その後、その融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを自分の墓地から除外し、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。②:墓地のこのカードが除外された場合に発動できる。相手フィールドの特殊召喚されたモンスターの攻撃力は、ターン終了時まで自分の墓地のサイバース族モンスターの数×400ダウンする。
この記事をきちんと読んできた方には、このカードとキマイラの相性が抜群に良いということが分かるでしょう。
このカードはサイバース2体で出せるリンク2で、自身をリリースし墓地の融合モンスターを素材を墓地から除外することで再融合するという効果と、このカードが除外された場合に相手場の特殊召喚されたモンスター全ての打点を墓地のサイバースの数に応じて下げるという効果を持っています。
このカードをまともに使うとなると、墓地に融合モンスターと素材を両方用意する必要があるため下準備が必要ですが、サイバース族を素材に指定しているため融合召喚したヴァイオレットキマイラと適当なサイバース1体でリンクすれば発動条件が整います。
また、このカードがリリースされた時点で、墓地のこのカード自身をキマイラの融合素材として除外し②の全体打点減少効果を誘発させることが出来ます。
墓地で素材とするサラマンで使いやすいのは、墓地効果のないフォウルあたりでしょうか。このカードの効果が通った時点で8割勝てるので、サンライトウルフ等も使っていいでしょう。
素材のサラマンの打点を1800と仮定するとキマイラの①効果によって攻撃力は2800+(1200+1800)/2=4300、リザードの効果が通れば打点が倍になるため2倍で8600。相手のライフが8000あったとしても、相手場のモンスターの元々の打点が2400なら墓地に5体、3000なら6体のサイバースがいるだけで1キルが成立します。
打点を下げる効果は対象を取らない効果であるため、特殊召喚さえされていればヒートライオの上書き効果が通らないモンスターでもサンドバッグにすることが可能です。
3種類の1キルパターン
キマイラによる1キルを狙う上で必要となるカードを紹介し終えたところで、実際の動きについて解説していこうかと思います。
しかし自分の手札、墓地、相手場の状況によって、狙っていく1キルの形が変わっていきます。
そもそも相手場にモンスターがいなければキマイラによる1キルは狙えないため、妨害をケアしながら合計8000打点を作るか、より堅固な盤面を作るかの2択になります。
転生ヒートライオ+キマイラ型
ヒートライオの項で紹介したように、転生効果によって相手のモンスターの打点を変更することで1キルを狙っていきます。
この型の利点は
・通常召喚されたモンスターでも1キル可
・ミラージュスタリオのリクルート利用可
この型を使えないのは
・相手場のモンスターを対象に取れない
場合です。
自分場で整えたい条件としては、
・場にレベル3を2体、手札か墓地から特殊召喚可能なサラマン1体
で満たせます。レベル3×2体についてはガゼル、スピニー、フォクシーを駆使すれば簡単に用意できます。
↓
レベル3×2体でミラージュスタリオX召喚。効果でフェネックリクルート。この後発動できる効果は炎属性のみ。
↓
スタリオとフェネックの2体でサンライトウルフリンク召喚。フェネック、スタリオ、フォウルの順でチェーンを組む。(フォウルは手札誘発であるため発動前に相手にチェーンの有無を確認する必要あり)
フォウルを特殊召喚。必要があればサンドバッグ以外をスタリオ効果で1体バウンス、フェネック効果でフュージョンオブファイアサーチ。
↓
フォウル1体でベイルリンクスリンク召喚。ベイル、ウルフの順にチェーンを組む。ウルフ効果で墓地のガゼルを回収し、ベイル効果で聖域サーチ。
↓
ウルフとベイルの2体でヒートライオリンク召喚、聖域発動して転生リンク。召喚時効果で相手場の魔法罠を2枚デッキバウンス。
転生効果で相手場のモンスターと墓地のベイルを対象に打点を500に変更。
↓
フュージョンオブファイアでヒートライオ、ガゼルを素材にキマイラ融合召喚。
キマイラの最終打点は5600+1500+2300=9400になり、攻500になった相手モンスターを殴って1キル。
遊戯王wikiの【サラマングレイト】のページでは、ガゼルとスピニーの2体からの1キルルートが書かれていますが、特殊可能なサラマンさえいれば、ガゼル以外でのレベル3×2でも可能です。
また、ガゼル効果でフュージョンオブファイアを落とさなくて済むので、何かしらの妨害をされた場合も余力を残しながら動くことが可能です。
先攻展開で用意し相手ターンで使用したロアーも、ヒートライオが転生したことで自己再セット効果を発動できます。万が一1キルが失敗した時の保険として発動しておくに越したことはないでしょう。
転生キマイラ型
プロキシーFの登場により、初手札に融合札がある場合は、かなり安定して転生融合を行うことが出来ます。
この型の利点は
・通常召喚されたモンスターでも1キル可
・ミラージュスタリオのリクルート利用可
・対象耐性モンスター相手でも1キル可
・メインフェイズ中の相手の妨害を突破しやすい。
という点です。
1キルできないモンスターは、ほぼ「相手カードの効果を受けない」あたりまで狭まるため、攻撃表示であれば大体1キルできるといっても過言ではありません。
唯一の欠点としては、やや消費が激しい点でしょうか。
おおまかな目安として、融合札1枚、プロキシーF用の効果2体、1体目キマイラ用のサラマン2体で計4体を場に並べられれば完成できます。
特筆すべきは、相手からの妨害を突破しながら1キル可能な点です。
メインフェイズ中の妨害として飛んできやすいのは主に《エフェクト・ヴェーラー》です。大抵のサラマン展開ではガゼルやミラージュスタリオ効果にチェーンして発動されますが、キマイラを出すことで1キルを見抜かれ、それを防ぐためにキマイラ対象で飛んでくることがあります。
キマイラ自体は対象耐性等は無く、自身の攻撃力をパンプさせる能力しか持っていません。唯一あるとすればサラマングレイトであるため、墓地のベイルリンクスによる疑似破壊耐性を付与可能である点です。ヴェーラーを食らうと単なる2800のバニラになってしまいます。
《墓穴の指名者》や《抹殺の指名者》を持っているならばチェーンして対処可能ですが、サラマンは展開系のデッキであるため、これらの指名者は《増殖するG》に優先的に切っていくことになります。
そのため、ヴェーラーを食らう可能性は非常に高いです。しかし、ヴェーラーは「相手メインフェイズにのみ発動可能」すなわち自分メインフェイズ終了時までに打つ必要があるため、終了宣言時に打たれた場合は再びメインフェイズに入ることが可能です。
そこで、あらかじめプロキシーFを用意した後にキマイラを融合しておくことで、ヴェーラーを食らったキマイラとプロキシーFで再び融合、転生キマイラを作り出すことが可能です。
また、サイドチェンジ2戦目以降は、こちらのデッキがサラマンだと割れているため、《原始生命態ニビル》が飛んでくることも予想されます。
相手の手札にニビルがあることを警戒して動く場合、手札に超融合があり、メイン中の召喚4回以内でキマイラとリンク1体を用意できれば、バトルフェイズ中に融合召喚を行うことで転生キマイラを作り出せます。
バトルフェイズ中の超融合は上記の《エフェクト・ヴェーラー》も飛んでこないため、このデッキを回していく上では有用なテクニックの一つです。
クロックリザード型
融合召喚したキマイラと、別のサイバースで即座にクロックリザードを作り、リザード自体を素材に墓地融合することで、打点減少とキマイラの用意を一度に行える超合理的コンボです。
この型を行う場合に注意すべきは
・相手場に特殊召喚された攻撃表示モンスターが必要。
・ミラージュスタリオのリクルート効果の使用不可。
・妨害1枚でコンボが崩れやすい。
という点です。消費が少ないためコンボ自体は簡単に狙いやすい分、実際に通せるかどうかの見極めが必要になります。お互いがリソースを削り合っていく詰めの段階で狙うのが最適でしょう。
キマイラを出した後に用意しやすいサイバース1体といえば、墓地の《転生炎獣スピニー》でしょう。キマイラ自体がサラマンであるため簡単に蘇生できますが、素材に使うと除外されるため、リザードの減少値で参照するサイバースの数が減ることには気を付けたいです。
サンドバッグにしやすい相手のモンスターとしては、妨害効果を持たないエクストラからのモンスター全般、メインの汎用では《幻創龍ファンタズメイ》がいます。
サラマンはリンク中心のデッキであるため、ファンタズメイはサイチェン後に投入されやすいです。ですがファンタズメイの攻守は2400/1700であり、サラマンで出やすいサンライトウルフやJジャガーなどの攻1800に突破されるのを防ぐため、攻撃表示で出てくることが多いです。
ファンタズメイは対象を取る効果を手札1枚でカウンターする効果を持つので、上記の転生ヒートライオ併用型では1キルを狙えませんが、リザードの全体打点減少は対象を取らない効果のため、墓地に5枚サイバースを用意できれば1キル成立が可能です。出てきたら絶好のカモだと思いましょう。
ただし、クロック・リザードは「サラマングレイトでない」「闇属性」モンスターであることからサラマンの各種サポートと噛み合わない点で注意が必要です。
ベイルで破壊から守ることもできませんし、スタリオのリクルート効果発動後の炎属性縛りにも引っかかるため、途中からリザード型に切り替えるには注意が必要です。
また、自身をリリースして効果を発動する都合上、セットされている墓穴の指名者を食らうだけでキマイラごと失うという大損を食らいます。
妨害を突破するために、なるべくならサラマンリンクとロアーを伏せて置いたり、レッドリブートを握っている状況下で狙うのが良いでしょう。
とはいえ、融合するキマイラ自体はいつ墓地に送られていても良いので、相手が中~低速型のデッキであればとりあえずスタリオ+フェネックのコンボでキマイラを出しておいて、帰ってきたターンでリザードを出してトドメ、というのも狙えます。
1キル可否の見極め
ざっと3通りの1キルパターンについて解説してきましたが、このデッキはサラマンである以上、無理に融合して1キルを狙わずにロアー&レイジを絡めた罠ビートに切り替えることも求められます。
では具体的にどのような状況下で「1キルをあきらめる」べきなのかを解説していきます。
第一に相手場に攻撃表示モンスターが存在しない、あるいはフリーチェーン退場効果を持ったモンスターしか存在しない場合です。
ドラゴンリンク等の1キルでは、除去、制圧効果を持った高打点モンスターを1ターン中に3体以上並べてフィニッシュするため、相手場にモンスターがいるいないに関わらず1ショットを狙っていけます。
しかしキマイラによる1キルは、当たり前ですがキマイラによる大幅な打点上昇効果に依存します。その過程でどうしても「攻撃表示モンスター」が必要となるため、相手場の状況に左右されやすいです。
とはいえ先攻でミラージュスタリオを使用でき、手札にガゼルを戻した状態でターンが帰ってきさえすれば、相手場ががら空きでも融合せずに8000打点を用意できます。
厄介なのは後者のフリーチェーン退場効果を持っているモンスター、具体的には《ダイナレスラー・パンクラトプス》や《紫宵の機界騎士》等のモンスターがいる場合です。彼らを殴ろうとしても自身の効果で逃げ、除去やサーチ等でアドを稼がれ、モンスターを殴らないと倍になれないキマイラはモンスターがいない方が与えるダメージが少ないという摩訶不思議な状況に陥ります。
そうしたモンスターがいる場合は落ち着いて強固な盤面つくりに徹しましょう。
とはいえパンクラトプスに対してキマイラを作ること自体は決して悪手ではなく、墓地のベイルで破壊を免れるため一方的に殴りにいき、メイン2で仕事を終えたキマイラを素材にサンライトウルフやヒートライオを作ってしまいましょう。墓地にいればリザードで再融合できますしね。
もう一つのあきらめパターンは大量の妨害が見込まれる場合です。
メタビート系のデッキ相手に、3枚以上の伏せで返された場合は、明らかにカウンターが1枚以上眠っているでしょう。キルルートは複数あるものの、融合札を複数枚用意できる状況でない限り、カウンターされてリソースを無駄に消費して負け、ということにつながりかねません。
そのターン中にキルできずとも、汎用のカウンター罠では《神の宣告》等のライフコストを要求するものが多いため、リソースと交換を意識していけばサラマンの持久力で持ちこたえることができます。
また、伏せが無くともサイド2戦目以降、自身のデッキがサラマンだと割れていると手札誘発、特に《原始生命態ニビル》が積まれることが多いです。
「どうせ握っていないだろう」という気持ちで展開していると、勝てる状況からニビルが飛んできて一気に不利に追い込まれたりするのでサイチェン後は無理に狙わず、基本的には召喚回数を4回以内に抑え、相手の手札が0枚であったり、超融合を握れた状態などにキマイラ1キルを狙うのが良いでしょう。
また、融合軸のデメリットでも述べますがキマイラは融合モンスターであるため、相手の墓地の《妖精伝姫-シラユキ》1枚で1キル不成立となることも覚えておきましょう。
融合軸のメリット
ここまでで、サラマンでの融合が単なるファン要素ではなく、「勝ちにいける」一つのファクターであることが伝えられていれば幸いです。
私自身、結構な頻度で秋葉原、新宿等のカードショップに通い詰めているのですが、店頭で「サラマン構築済デッキ」のリストを見るたびに、「なぜキマイラが入っていないんだ!?」と心の中で叫びまくっています。極端なところではヒートライオさえ入っていなかったりします。
そう、未だにサラマンは罠メタビ軸が一般的なのです。
確かにロアーとレイジの盤面は強力であり、サンライトウルフもリンク2としては、オルフェゴールにおけるガラテアに比肩するモンスターです。
しかし、ロアーレイジいずれもサラマンリンクモンスターを発動条件に要求する以上、サンライトウルフを突破されてしまうと腐ってしまいます。
また、フィニッシャーや盤面突破するためのリンク4として《ヴァレルソード・ドラゴン》や《双穹の騎士アストラム》、最近では《アクセスコード・トーカー》等が採用されますが、これらはいずれも炎属性以外のモンスターであり、サラマンにおける展開とバウンスによる除去で2アドを取れるミラージュスタリオとの兼ね合いが難しくなる、と私は考えています。
ミラージュスタリオを使用したターンは《トロイメア・フェニックス》でチクチクアドを稼ぎながら有利な盤面を維持できる、という考え方もありますが、ならば炎属性に寄せて1キルを狙っていく方が得じゃない?というのがこのデッキのコンセプトです。その結果として、エクストラ枠の都合上フェニックスが抜けました。(だって手札コストのいらないヒートライオでいいんだもん)
以上を踏まえると、融合軸の利点として
①キマイラが炎属性であるため、スタリオの効果を気軽に使える。
②モンスターを4体分並べずとも、融合札さえあればモンスター2体で高攻撃力のキマイラを用意できる。
③メインで採用している融合札は相手のモンスター除去も兼ねるため、リソースが激しくなりにくい。
④サンライトウルフへの依存が少なく、浮幽さくらによる除外を受けても勝ち筋を残していける。
⑤ガゼルを除外されても、継戦を度外視して1キルに切り替えることが出来る。
⑥1キルができずともキマイラによる高打点は脅威であり、生き残ってもライフコストを要求するカードを切りにくくなる。またエクストラターンにも強い。
が挙げられます。
また、これはやや盤外的な話なのですが、「普通のサラマンでは融合体は出てこない」と思われているのを逆に利用して、情報アドバンテージの面でも有利です。
ついでに、やっていることは1ショットキルというえげつないプレイスタイルでありながら、キマイラというロマン砲じみたカードと、転生融合という消費が大きく派手な展開(レディースエーンジェントルメーン!!)が相まって、初対戦の方に驚かれたり感想戦で盛り上がれたりするので、そういった面でも使っていて楽しいデッキです。
やっぱカードゲームって”コミュニケーションツール”、なんだよなあ。
融合軸のデメリット
とはいえ融合を採用するにあたり、どうしても罠ビート軸にはない壁が増えます。
1キル可否の見極めでも述べたように、相手場の状況によって1キルを狙えなかったり、急所に妨害を食らうだけで止まったりします。
また、通常のサラマン構築に加えて、メインにフュージョンオブファイア、フェネック、超融合2枚を採用しているため、その枠に本来入る手札誘発などのメタカードを詰め込む枠が狭まってしまうため、防御力が格段に落ちることは必至です。
その上、必要ない場面での融合札の引きすぎという事故も起こり得ます。先攻でフュージョンオブファイア、フェネック、聖域、ガゼル無し、のような手札は2度と見たくありません。超融合なら闇2体でスターヴヴェノムにするなど防御札に出来ますが、闇が並ばないデッキ相手には無力です。
【ヴェルズ】のようなデッキを相手にする場合は、最悪サイチェンで融合札全抜きまで視野に入れて良いでしょう。
今後の調整について
2020年3月上旬現在での融合転生デッキの解説は以上になります。
ここからは4月からの新ルール及び今後のカードプールにおいて、どのような改造点が見いだせるかを考えていきたいと思います。
まず新ルールに関してはこのデッキにとっては追い風だと言えます。
サンライトウルフをエクストラモンスターゾーンに出した場合のリンク先は一ヶ所のみであるため、リンク先がふさがっていたりする場合はリンク先を素材にしない限りエクストラからキマイラを出せないという状況が現行ルールでよく起こっていました。
また超融合によるスターヴヴェノムがエクストラゾーンに居座り、サラマンの展開をしにくかったりもしたので、そういった状況が無くなるという点でさっさと4月になって欲しいと思います。
メインデッキの改造についてですが、サラマンは先攻にしろ後攻にしろ、《転生炎獣ガゼル》というパワーカードを初手に引き込めるか否かが重要になります。そのため、何かしらが制限解除でもされない限り、メイン40枚を増やすという選択肢はなく、変えるとしても微小な程度になるでしょう。
ただ、最近の新規カードで注目しているのはネメシスです。このデッキでは一度使用して除外されたベイルリンクス、スピニー等をデッキに戻しながら召喚権を使わずに展開が行えるため、ガゼル以外の継戦能力の確保につながると考えています。
炎属性 レベル2
炎族
効果
攻撃力1100 守備力200
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。①:「ネメシス・フラッグ」以外の除外されている自分のモンスター1体を対象として発動できる。このカードを手札から特殊召喚し、対象のモンスターをデッキに戻す。
②:自分メインフェイズに発動できる。デッキから「ネメシス・フラッグ」以外の「ネメシス」モンスター1体を手札に加える。
水属性 レベル3
水族
効果
攻撃力1500 守備力400
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。①:「ネメシス・アンブレラ」以外の除外されている自分のモンスター1体を対象として発動できる。このカードを手札から特殊召喚し、対象のモンスターをデッキに戻す。
②:「ネメシス・アンブレラ」以外の自分の墓地の「ネメシス」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを手札に加える。
ネメシス・フラッグは炎属性であり、各種サラマンリンクモンスターの素材になれる上、デッキからネメシス・アンブレラをサーチすることが可能です。サーチしたアンブレラは水属性で噛み合わないように思えますが、レベルが3であるため、素材に縛りの無いミラージュスタリオのX素材として有用です。また、フラッグからサーチしてアンブレラを出し、先にフラッグをリンク素材として使用することで、墓地のフラッグをアンブレラ効果でサルベージする、という芸当も可能です。
やべえ、書いてたら入れない理由が無いような気がしてきた。デッキいじりてえ。
とはいえ特殊召喚は除外されているカードが無いと行えず、ネメシスばかり引きすぎても事故要因となるため、入れてもフラッグ2アンブレラ1が限度でしょうか。
個人的にはネメシスをサーチできる魔法カードが出て欲しいですね。
今後、海外TCGのレギュレーションに沿う形でミラージュスタリオが禁止された場合は、スピニーの枚数を減らしてがっつりネメシスの展開も組み込もうと思います。
終わりに
如何だったでしょうか、DANEが出たあたりから組み始めておよそ1年近く試用と調整を繰り返してきたデッキだったので、個人的に10期の集大成ともいえるクオリティに仕上がり満足です。
やはり店舗予選を取れなかったのが心残りですが、現在一番のお気に入りデッキなので11期に入っても(ガゼルが禁止にならない限り)崩さずに回し続けてると思います。
むしろこのデッキを流行らせて環境を融合転生一色にし、キマイラが禁止にぶち込まれても悔いはないです。(そうはならんやろ)
この記事を読んで、一人でもキマイラ、ないしサラマンというテーマそのものに興味を持っていただける方が増えてくれたら幸いです。今のサラマンはストラク3箱より、2箱にシングル追加していく方がいいですよ!
次の記事では4月からの改訂予想をしていこうと思います。
では、さよ~~なら~~。